何のための保護帽
1. 保護帽は国家検定品
産業用保護帽は、思わぬ事故などで受ける衝撃から、大切な頭部を守る保護具です。 保護帽の性能に関しては、厚生労働省により厳格な規格が定められ、この国家検定に合格した製品でなければ、保護帽として製造販売を禁止されているのです。
2. 保護帽を被らないとどうなるか?
ヘルメットを被らずに、国家規格の試験を行ったらどうなるでしょう?
この時頭にかかる衝撃は、なんと、4000~5000kgfにも達します。(ヘルメット着用時は500kgf以下) 過去の研究(※注)により、人間の致死域は約2000kgfとされています。 保護帽を着用することにより、頭部に受ける衝撃を約1/10以下にまで軽減できるのです。
3. 作業中に転んだら?−飛墜兼用帽の効果−
現実の事故は、国家検定で行うような一定の重さによる、一定の方向からの衝撃だけで発生しているわけではありません。災害事例には、転倒によるものが予想外に多く、脚立から落ちて死亡した事故事例もあります。高さは2mにも及ばないのに死亡します。脚立から仰向けに転倒すると、丁度、後頭部を打つ高さになる、という理由によると考えられています。そこで、作業者が仰向けに転倒した場合の後頭部への衝撃を調査するために、弊社では独自に転倒試験機を開発し、様々な状況を想定して試験をやってみました。
条 件 | 無 帽 | 飛来用 (ライナーなし) |
飛墜兼用 (ライナー入) |
頭部への衝撃荷重 | 1700kgf | 1200kgf | 480kgf |
※試験条件 : 頭の位置を、地上から高さ50cmにして、鉄板へ転倒させる。
4. あごひもに注目!−あごひも装着の効果−
条 件 | 飛墜兼用 (ライナー入) アゴヒモを締めない時 |
飛墜兼用 (ライナー入) アゴヒモ着用時 |
頭部への衝撃荷重 | 1500から2000kgf 保護帽が頭からはじけ飛んでしまう |
720kgf |
※試験条件:頭の位置を地上から高さ1mにして、鉄板へ転倒させる。
上の表を見て下さい。あごひもを締めない時には、転倒して頭部が地面に激突した瞬間、保護帽は頭部から外れてしまい、死に至ることもあります。あごひもを締めることがどんなに大切かよく分ります。 ただし、外国では、大抵の場合あごひもは使っていません。これは、墜落、転倒事故の時、頭部を保護帽で守ろうという思想が、規格上欠如しているからです。
※注・・・米国ウェイン大学(Wayne State University) 1960、1961、1963年
(参考文献)(社)日本保安用品協会 発行 セーフティダイジェスト 97年11月号
菊池 正 「保護帽の衝撃吸収性について」