株式会社谷沢製作所 茨城工場 品質保証部 渡辺 光史
近年わが国では熱中症についての認識が高まり、産業分野においても、熱中症を原因とする労働災害防止の必要性が認識されています。とくに、熱中症による死亡災害者数の約6割を占める建設業においては、さらに重要な課題となっています。
熱中症の防止には、強い日差しによる直射熱を避けながら、身体を冷やすことが有効といわれます。ところが、直射光を避けることができない作業環境の多い建設業では、その対策に苦慮することが多いようです。そのため、建物外壁等に塗ることで内部温度の上昇を抑える効果のある「遮熱塗装」をヘルメット表面に施して、ヘルメットの温度上昇を防ぐというアイデアが検討されました。
遮熱塗装とは、壁面温度上昇の元となる太陽光中の熱線(赤外線)を高い率で反射する機能を持たせた特殊な塗料を塗布することにより、内部の温度上昇を防ぐ効果をもたらすものです。建物の冷房効果を高めて省エネに貢献したり、道路に塗装して気温上昇を防いだりするなどのために、実際に塗装されているものをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。
しかし、コンクリートや鉄材に塗布するための塗料をそのまま塗ると、ヘルメットに加工したときに不具合が生じることがあります。具体的にいえば、遮熱塗料に含まれるコンクリートや鉄材への密着性を高めるための成分が、プラスチック製品であるヘルメットの帽体を激しく劣化させた結果、ヘルメットとしての保護性能が失われることが起こります。また、逆に塗膜がヘルメットに充分に密着していないときには、塗装がすぐに剥がれてしまうことが起こります。このため、市販の遮熱塗料をそのままユーザーがヘルメットに塗装するのは危険を伴います。このことから、ヘルメットメーカーでは、ヘルメットへの影響を確認しながら塗装の研究を進め、各種の遮熱塗装を販売しています。
さて、その塗装が可能になった、ヘルメット用遮熱塗装はどのような効果をもつものなのか興味をもたれた方もいらっしゃることと思いますので、簡単にその内容を説明させていただきます。