調査方法の概要
保護帽、特にその主たる構成部品である帽体は、様々な材質で作られている。
保護帽、特にその主たる構成部品である帽体は、様々な材質で作られている。
材質により、物理的な外傷による性能低下の度合いは大きく異なるが、これらは目視検査での確認が比較的容易と思われることから、今回は調査範囲には含めなかった。むしろ多くのユーザーが気に掛けるのは、目立った外傷のない場合での経年劣化であろうことから、今回はこの一点に絞ることとした。
そこで、各種材質の帽体につき、5年間の屋外大気曝露による経年劣化を調査し、その結果を基に「保護帽の経年劣化」について考察した。
茨城県北茨城市の海岸から約4km入った小高い丘の南側傾斜面で行なった。
屋外大気曝露期間は、1996年7月から2001年6月。
試験時の年間平均降水量 | 1,360mm/年 |
試験時の年間平均日照時間 | 1,883h/年 |
下記の代表的な材質の当社製帽体を用い、色は「黄色の標準色」とした。
・熱硬化性樹脂FRP製 | 不飽和ポリエステル樹脂+ガラス繊維 |
・熱可塑性樹脂PC製 | ポリカーボネート樹脂 |
(1)試験結果
厚生労働省「保護帽の規格」に基づく下記の試験を行い、次の結果を得た。
(但し、試験時の内装及び内装取付鋲は新品を使用。表1、表2参照。)
FRP製は、5年経過時点で安定した衝撃吸収性能を保持していた。
PC製は5年目で、衝撃吸収性能が得られなくなったものが出た。
どちらの材質とも、5年経過時点で耐貫通性能を満足した。
PC製は5年経過時点で安定した耐電圧性能を保持した。
(2)各材質と経年劣化についての考察
以上、弊社が実施した屋外曝露試験の結果に基づいて「保護帽の経年劣化」について考察をした。
紫外線劣化については、屋外曝露試験で一応の検証ができた。しかし、どの材質にも言えることであるが、炎天下の酷熱、屋内作業環境で遭遇する熱・薬品、大気汚染ガスが溶け込んだ雨水、汗・整髪剤の類の影響など、保護帽を劣化させると考えられる要因は、まだたくさんある。
他方、著しい外観上の傷跡は、衝撃や摩擦を受けたなどの機械的要因(日頃の取扱いによるものも含む)による劣化の現れであり、危険の前兆でもある。そのときは「問題ない」と思えても、それを続けて使用することで、「目に見えない形」で劣化が進行し、急激に保護性能を発揮できなくなることもある。著しく傷付いた保護帽はもちろんのこと、少しでも傷があると思われる保護帽や、傷はなくとも作業中に何らかの衝撃を感じた保護帽については、早め早めの交換をお奨めする。
平成19年11月
株式会社谷沢製作所 茨城工場
品質保証課 渡辺光史