株式会社谷沢製作所 営業部 谷澤直人
発破を用いるトンネル掘削工事になくてはならないのが、坑口に設置する防音扉です。トンネルの坑口が人家に近い場合には、夜間に行う発破の音を抑えるために、この防音扉を設けます。また、海に近い掘削現場では漁場との関連で設置したり、山間部ではオオワシなどの営巣地を配慮して設置したりすることもあります。
「ヘルメットのタニザワ」は防音扉のメーカーでもあります。
株式会社谷沢製作所 営業部 谷澤直人
発破を用いるトンネル掘削工事になくてはならないのが、坑口に設置する防音扉です。トンネルの坑口が人家に近い場合には、夜間に行う発破の音を抑えるために、この防音扉を設けます。また、海に近い掘削現場では漁場との関連で設置したり、山間部ではオオワシなどの営巣地を配慮して設置したりすることもあります。
「ヘルメットのタニザワ」は防音扉のメーカーでもあります。
建込中の第一号扉
小断面トンネルで用いた鋼製第一号扉
そこで、平成8(1996)年ごろから、製品仕様の確立に力を注ぎました。まず、当社の防音扉が使われている現場で防音効果測定を繰り返し、データの蓄積を進めました。初めは簡易的な方法で行いましたが、その後、火薬メーカーの協力を得て、精度の高い測定ができるようになりました。このような実際の測定結果の蓄積により、扉の施工状態等、現場条件によって効果はばらつくものの、想定できる効果範囲を製品仕様書上に明記出来るようになりました。
一方、平成11(1999)年には騒音、振動、低周波等の研究を行っている財団法人小林理学研究所に、当社が用いている防音パネル(グラスウールの吸音材を挟んだ鋼鉄製パネル)の性能データ(音響透過損失と吸音率)の計測を依頼しました。この時に得られたデータはその後、当社製防音扉の信頼性を大いに高めました。
また、各現場からは当社が製品納入後に効果測定を行う姿勢と、参考資料として提出した報告書の内容を評価していただき、当時、北進を続けていた東北新幹線のトンネル現場では次々と、当社の防音扉が採用されました。
その後、防音扉の役割として脚光を浴びてきたのが、低周波対策です。発破から生じる音は、音源から離れるにつれて可聴音が減衰し、低周波部分の割合が大きくなります。それにより、切羽から離れた場所では、音は聞こえないけれども発破の都度、窓ガラスやふすまががたがたと振動するといった現象が起きることがあります。
この低周波を低減するために、音響工学を利用した最新の研究を行っているゼネコンもありますが、一般には防音扉の表面にコンクリートを厚く吹き付けて、質量を増す方法によって対策します。
しかしながら、扉を建てた後に行うコンクリートの吹付作業は現場を汚すだけでなく、移動や撤去の際にもたいへん不便なため、当社では100㎜厚の鉄枠入りのコンクリートパネルをあらかじめ用意して、扉の切羽側に貼りこむ方法を取っています。これにより、騒音は7~8dB、低周波は5dB程度の低減効果が期待できます。
なお、使用後のコンクリートパネルは、リサイクル材として有効活用しています。
防音扉の上部に取り付けた新型ダンパー。風の通っていない風管を挟み込んでいます。送風時には下あごの部分が開きます。
坑口から坑内に向かって移動中の「移動式防音扉」。側扉は外開き、主扉は内開きにしています。