ヘルメットに対するユーザーの皆さんの要望は、おおむね(1)軽く(2)蒸れないように(3)被りやすく、そして(4)格好よくの4 点に尽きるのではないでしょうか。当社にとって、いずれも終点のない永遠の開発テーマですが、他のヘルメットメーカーにとっても同様で、各社工夫を凝らした商品を発表しています。
ヘルメットの軽量化は、製品質量のおよそ2/3 から3/4 を占める帽体(シェル)をいかに軽くするかにかかっています。樹脂ごとの比重を変えることはできませんから、帽体を軽く作るためには、樹脂の量を減らすしかありません。
ところが肉厚を削って樹脂量を減らすと、衝撃吸収能力や耐貫通性能を著しく殺いでしまいます。そこで研究の対象となったのがFRP製の帽体です。冒頭で紹介したように、FRP は母材、強化材、充填材の複合材料ですので、その組み合わせを変えながら軽量化に挑戦することができるからです。
昭和60 年(1985 年)、ある樹脂メーカーからポリエステル樹脂に代るFRP母材の紹介がありました。その頃、既に当社のFRP 製ヘルメットは、他社より軽いことを売り物にしていましたが、これをきっかけに、さらに50 グラム軽い製品の完成を目指して開発がスタートしました。
まず、使わなくなった古い金型を用い、肉厚を薄くした帽体を試作してみました。これにより、成形後の帽体質量は50 グラム減を軽々クリアしましたが、当然のことながらこれでは衝撃を受け止めることも吸収することもできず、簡単に割れてしまいます。
機械的強度を上げるために、先に紹介を受けた樹脂を始め、母材として最適な樹脂を求めて試作を重ねましたが、なかなか適当なものが見つかりません。最後にたどり着いたのが、あるグレードのビニルエステル樹脂で、これでようやく強度を満たした帽体を作ることに成功しました。
しかし、貫通試験を行うと試験錐を受け止めることができず、突き抜けてしまいます。
そこで取り組んだのは、ガラス繊維のカット寸法を長くする方法です。これは耐貫通性能アップに大きな効果を生み、ヘルメットの性能要件を完全に満たすことができました。